ごみ資源化処理 実証試験の計画・結果

実証試験の計画・結果

1.目的

  1. 日高市の可燃性一般廃棄物を、キルン式好気性発酵技術を使って、セメント資源化する技術を確立する。
  2. セメント資源化処理時の環境負荷(排ガス中のダイオキシン類等、施設からの臭気、その他)を調査し評価する。

2.期間ならびに処理能力

  1. 平成13年3月より1年間実施
  2. ごみ処理能力は、1日あたり60トン

3.実証試験のステップ

実証試験のステップの詳細表
番号 ステップ名 期間 運転規模 内容
1 予備調査 ごみ収集状況等を調査する。
2 ステップ1 平成13年3月から平成13年5月 調整運転 無負荷→1日あたり20トン→1日あたり30トン→1日あたり60トンの各負荷で短期運転を実施する。
3 ステップ2 平成13年6月から平成13年8月 増量運転 1日あたり60トン負荷の日数を増やす。
4 ステップ3 平成13年9月から平成14年2月 実稼働レベル運転 1ヶ月のうち、3週運転、1週休止をベースとする。 休止時は、問題点処理。さらに期間中に1ヶ月連続運転を実施する。

4.検討・確認項目

(1)ごみの資源化工程と資源化物のセメント焼成利用工程についての確認

ごみの資源化工程と資源化物のセメント焼成利用工程についての確認の詳細表
番号 項目 内容 補足説明
1 ごみ質・量の変動確認 回収地域による変動の把握
季節による変動の把握
ごみ質・量の変動を把握し、受入状態に対する最適運転方法を確認する。
2 回収条件の確認 回収ごみの大きさの把握 受入時のごみの大きさに関して、キルン通過・排出状況、破砕機能力などを見極め、処理可能な大きさを確認する。
3 混合条件の確認 資源化物(発酵品)とするための最適運転条件の把握 (一次)発酵品の性状に関する、目標範囲を確認する。
(一次)発酵のための最適運転条件(キルン速度、原料含水率、通風量等)を確認する。
4 セメント焼成に関する調査 セメント焼成工程への影響調査
排ガス中のダイオキシン類等の測定ならびに評価クリンカ(セメントの中間製品)中のダイオキシン類の測定
プレヒータ各所の温度・圧力等やキルンの諸データにより焼成工程への影響を確認する。
排ガス中のNOx, SOx,ばいじん、塩化水素、ダイオキシン、CO等を測定し,ごみ処理の有無による変化を確認し、評価する。
クリンカ中のダイオキシン類を測定し、移行の有無を確認する。
5 セメント品質に関する確認 セメント品質への影響 クリンカならびにセメントを分析し、品質への影響を確認する。
6 処理設備周辺の環境調査 処理設備周辺、敷地境界での臭気等の環境調査 処理設備周辺、敷地境界での臭気等を調査し、設備仕様を評価する。

(2)休転時の体制を想定しての確認内容 

休転時の体制を想定しての確認内容の詳細表
番号 項目 内容 補足説明
1 受入能力の確認 休転時の受入数量の確認 セメント焼成設備の25日程度の連続休止を想定し、資源化処理品の在庫容量等の対応策を確認する。
2 貯蔵品ハンドリング タンク内での長期貯蔵品のハンドリング調査 タンク内での長期貯蔵後の状況、抽出時の状況、循環の頻度等を調査し、対応策を確認する。
3 脱臭装置性能評価 脱臭装置性能を確認 休転時対応用の脱臭装置の性能を確認する。

(3)実証試験スケジュール

予備調査:平成13年2月

ステップ1:平成13年3月~5月

ステップ2:平成13年6月~8月

ステップ3:平成13年9月~平成14年2月

(4)事業を行うにあたっての生活環境影響調査測定項目

  • 煙突排ガスの影響 工場近傍でのSox、Nox、浮遊粒子状物質、ダイオキシン類等の測定
  • 廃棄物運搬車両の影響 搬入ルートでのNox測定
  • 騒音・振動の影響 工場敷地境界上および運搬車両通行沿道
  • 臭気の影響 工場敷地境界付近

(5)搬入・搬出ルート

国・県道を利用を基本ルートとして、太平洋セメント北側都市計画道路を通りセメント工場北門(市役所前)から搬入・搬出する予定です。

一般廃棄物資源化処理実証試験の結果概要

受入実績

表1 実証試験でのごみ受入量実績の表組

調査項目と結果

(1)ごみ質調査

  1. 可燃ごみの調査
    季節別及び地域別のごみ質(3成分、嵩比重、発熱量、組成比、元素分析)の変動は小さく、セメント原燃料としての資源化に問題ないことが確認できた。
  2. 不燃ごみの調査
    不燃ごみの内、廃プラ類とガラス・セトモノ類は資源化の対象とするが、金属類は対象外である。不燃ごみ中の金属類混入率の変化を調査したところ、金属類分別回収前(平成13年1月以前)で平均11.3%あった混入率が、金属類分別回収後は平均3.3%迄下がってきた。実稼動に向けて、金属類の更なる分別徹底が必要である。

(2)ごみの資源化(発酵処理及び破砕・分別)試験

  1. 実証設備の試運転と不具合点の改造を重ね、7月末にはごみ受入量計画値である1日平均60トンの受入体制が確立した。
  2. 2回の連続運転(57日,49日間)で良好な発酵状況が確認できた。発酵の確保のために添加を検討していた戻しコンポストや下水汚泥の投入は必要ではないことが確認された。
  3. 大きい物や長いひも状の物が原因となって大塊が成長し、これが排出時のトラブルを引き起こす。
    ごみを出す際の形状の徹底(=大きさ:縦50センチ、横50センチ以下)が不可欠である。
  4. ごみ処理量に対するセメント資源化率は99%程度で、残り1%の金属類は日高市へ返却されて別途処理される体制が確立された。

(3)資源化物の貯蔵試験

セメントキルンの休転時もごみは連続的に入ってくる。この場合、ごみの資源化(発酵処理及び破砕・分別)のみを行い、資源化物をテント倉庫に貯蔵する。貯蔵にあたって、作業環境的に問題ないか、臭気などの周囲への環境影響は問題ないかを調査した。

  1. 資源化物を空気遮断した密閉容器に入れて測定した結果、メタンの発生は殆どなかった。爆発下限濃度が5%であるのに対し、最大でもその1/10の0.5%までしか増えることはなく爆発の可能性は皆無といえる。
  2. テント倉庫と同条件(換気量、資源化物占有率)で20トン規模のテストを行ったところ、酸欠の可能性も無く(常に20%以上)、硫化水素の発生も無く、作業環境の安全が確認された。
  3. 切り崩し作業を行った場合においても、切り崩し箇所で局所的な酸欠が起こることも無かった。
  4. 脱臭機での脱臭効果を測定したところ、十分な効果が確認できた。

(4)資源化物のセメント焼成試験

  1. セメント原燃料として使用することによるセメントキルンの操業上の問題はなかった。
  2. 資源化物を1トン投入することにより石炭を0.3トン程度低減させることができ、また、焼却灰が石灰石、粘土等と共にクリンカ鉱物となり0.08トンの天然資源(粘土)を低減させることができる。
  3. 資源化物の有無にかかわらず、排ガス中のダイオキシン類濃度は微量で、平成14年12月より強化される規制値(0.1ng-TEQ/m3N)を十分に満足できることが確認できた。
    表2排ガス中のダイオキシン類濃度の測定結果
    番号 測定年月日 資源化物
    投入
    毒性等量
    ng-TEQ/m3N
    1 平成13年4月27日 非投入 0.0083
    2 平成13年5月24日 非投入 0.00089
    3 平成13年7月23日 非投入 0.036
    4 平成13年10月30日 1時間あたり2トン 0.016
    5 平成13年11月17日 1時間あたり2トン 0.031
    6 平成13年12月8日 1時間あたり2トン 0.0038
  4. 資源化物使用時もクリンカの主要成分は安定しており、塩素量も問題ないレベルであった。また、重金属などの微量成分についても、セメント協会発表の一般的な普通ポルトランドセメントの含有量以下で問題なかった。

資源化物を使用する事によるセメント品質への影響についても特に問題はなかった。

(5)生活環境影響調査

生活環境影響調査では、事業を始める以前の現状値を測定してこれをバックグラウンド値とする。この値に、事業を開始した際の環境負荷増加分を加えることによって、予測・評価を行う。

この予測・評価値が規制をクリアーできるか否かで、環境負荷の度合いを評価する。
調査項目(=環境要素)は生活環境影響調査指針に従い表3のように設定した。

表3 今事業での環境要素設定表
調査
項目
生活環境影響要因 煙突排出
ガス
施設の稼働 脱臭装置
排出ガス
廃棄物運搬車両の走行
大気
汚染
二酸化硫黄(SO2) (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし
大気
汚染
二酸化窒素(NO2) (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり
大気
汚染
浮遊粒子状物質(SPM) (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり
大気
汚染
塩化水素(HCl) (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし
大気
汚染
ダイオキシン類 (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし
騒音 騒音レベル (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり
振動 振動レベル (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり
悪臭 特定悪臭物質濃度 (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし (注釈1)設定あり (注釈2)設定なし
廃棄物 ごみ資源化工程で分別
された金物等
(注釈2)設定なし (注釈3) (注釈2)設定なし (注釈2)設定なし
  • (注釈1):事業での活動が有り、生活環境影響調査の要素として取り上げた項目
  • (注釈2):事業の活動が無い項目
  • (注釈3):事業の活動は有るが、日高市の別途処理が確保されているので、今回は生活環境影響調査の要素としては取り上げなかった項目
  • 測定地点は、セメント焼成キルン煙突排ガスの影響は最大着地濃度地点付近で、騒音・振動・悪臭については敷地境界線上とした(生活環境影響調査指針)。また、運搬車両の影響を評価するために搬入ルートでの測定も実施した。

全ての予測・評価項目について規制をクリアーできることから、環境負荷が小さいということが確認できた。その内の主な項目について予測・評価結果を表4~6に示す。

表4 セメント焼成キルン煙突排ガスの影響の長期予測と評価
項目 二酸化
硫黄
(ppm)
窒素
酸化物
(ppm)
二酸化
窒素
(ppm)
浮遊粒子状
物質
(mg/m3)
ダイオキシン類
(pg-TEQ/m3)
バックグラウンド濃度 0.005 0.024 - 0.037 0.161
最大着地濃度 0.0041 0.0029 - 0.0008 0.0009
長期予測濃度 0.0091 0.0269 0.0175 0.0378 0.1619
日平均値の年間2%除外値 0.02 - 0.03 0.09 0.16
環境基準値 0.04以下 - 0.06以下 0.10以下 0.6
評価 -
セメント焼成キルン煙突排ガスの影響の短期予測と評価
項目 二酸化硫黄
(ppm)
二酸化窒素
(ppm)
浮遊粒子状物質
(mg/m3)
塩化水素
(ppm)
バックグラウンド濃度 0.005 0.015 0.037 0.0004
最大着地濃度 0.000 0.040 0.001 0.0003
短期予測濃度 0.01 0.06 0.04 0.001
環境基準値 0.1以下 0.2以下(注釈1) 0.20以下 0.02(注釈2)
評価
  • 注釈1…環境基準が無いため、S53.3中央公害対策審議会答申の短期暴露基準を用いた。
  • 注釈2…環境基準が無いため、S52.6環境庁大気保全局長通達の目標環境濃度を用いた。
表6 セメント焼成キルン煙突排ガスの影響の長期予測と評価
特定悪臭物質濃度 セメント焼成キルン
煙突排ガス
脱臭装置
排出ガス
バックグラウンド濃度 合成
濃度
規制基準値 適否
アンモニア 10,000 100 50 10,150 2,000,000
メチルメルカプタン 1 0 0 1 4,000
硫化水素 1 1 0 2 60,000
硫化メチル 3 0 0 3 50,000
二硫化メチル 3 0 0 3 30,000
アセトアルデヒド 75 17 5 97 100,000
スチレン 5 10 10 25 800,000
プロピオン酸 5 0 1 6 70,000
ノルマル酪酸 5 0 1 6 2,000
ノルマル吉草酸 5 0 0 5 2,000
イソ吉草酸 5 0 0 5 4,000
トリメチルアミン 1 0 0 1 20,000
プロピオンアルデヒド 11 2 2 15 100,000
ノルマルブチルアルデヒド 11 2 2 15 30,000
イソブチルアルデヒド 11 2 2 15 70,000
ノルマルバレルアルデヒド 11 2 2 15 20,000
イソバレルアルデヒド 11 2 2 15 6,000
イソブタノール 5 10 10 25 4,000,000
酢酸エチル 5 10 10 25 7,000,000
メチルイソブチルケトン 5 10 10 25 3,000,000
トルエン 5 20 30 55 3,000,000
キシレン 5 10 10 25 2,000,000
この記事に関するお問い合わせ先

環境課 廃棄物対策担当 (本庁舎 3階)

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電話:042-989-2111(代表)
ファックス:042-989-2316
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更新日:2022年06月01日